天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

文(房)具を詠むー筆・鉛筆・ペン(1/3)

 「文房具」の「文房」とは、書斎のことで、そこに備えておく道具が、文房具になる。大まかに筆、墨、硯、紙の4点を指すのが一般的。なお文具というとそれ以外の品を含める。

 

  頼もしな君君にます折にあひて心の色を筆にそめつる

                     西行

*下句は感動した思いを文章にして書いた、ということ。

 

  筆採りて五日経にけむ明がたにほのぼの石の形見せけむ

                   橘 曙覧

*上句も下句も推量のかたちをとっているが、執筆に夢中になって時日の経つのに無関心であった、ということか。

 

  そば湯にし身内あたためて書き物を今一息(ひといき)と筆はげますも

                  伊藤左千夫

  わがために筆あらふべく人のために髪あらふべく賀茂の川流る

                  与謝野鉄幹

  かたみともならばなれかし警報のさなかも措(お)かぬ筆のみいのち

                   四賀光子

 

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