天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

戦争を詠むー戦い(2/6)

  月かげは蚊帳にあまねし戦ひを思ひつづけしが今は眠らむ

                         柴生田稔

  かへりみて 己(し)がさびしさを言ふなかれ。若きをたのみ 国は戦ふ

                         折口春洋

  国こぞり人勢(きほ)ふときなにゆゑの戦ぞやと思ひ見るべし

                         半田良平

  真日なかに家焼け落つる前に立ち哭く人もなし戦終る

                        鹿児島寿蔵

  はや十年見ざりし蛍たたかひに出でて来し身にまつはりて飛ぶ

                         山本友一

 

  昭和十六年、十二月八日の、朝だった、

  ラジオは告げた

  世紀の決戦を。                赤木健介

 

  パスカルが 人間は葦だと言つた、 破(や)れ葦のこの肉体は、闘ふ葦だ

                         赤木健介

*赤木健介(1907年―1989年)は、青森市生まれ。左翼運動に挺身。検挙投獄される。出獄ののち、日本共産党に入党するが、一斉検挙にあい、1944年に判決が下って下獄、敗戦後は、連合軍により解放された。

 

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蚊帳