天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

身体の部分を詠むー乳房(4/6)

  蒼みゆくわれの乳房は菜の花の黄の明るさと相関をせり 

                      阿木津 英

  何ゆえにある乳房かや昼寒き町にきたりて楊枝を購(もと)む

                      阿木津 英

*作者の阿木津英は、現代短歌におけるフェミニズムの問題を追究し続けていることで知られる。その過程で起きた疑問のひとつであろう。

 

  乳房はふたつ尖りてたらちねの性(さが)のつね哺(ふく)まれんことをうながす

                      上田三四二

  男らがボインとぞ呼ぶ乳房なり下半分を布で締め上げる

                       奥村晃作

  スクラムを組みつつ触れしひとの乳房やはらかかりき罪のごとくに

                       高野公彦

スクラムを組む: 複数人数で肩を組んで隊列または円陣を組むこと。

 

  所有するものにあらざる感じにてある夜乳房を見おろしている

                       浜名理香

*浜名理香: 熊本市出身の女性歌人。ひたむきに生きる女性のさまざまな出来事や感情を、彼女独特の感性と表現で、率直に飾ることなく歌にしている。(百科事典から)

 

  歩行者の一人となりてさしあたり乳房と並びゆく二三秒

                       竹山 広

*作者の隣を歩く女性の乳房が気になったのだ。

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楊枝