天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

わが歌集からー魚類(7/7)

アナゴ   1首

  腐食せしガス弾の穴に棲むアナゴDNAと皮膚に傷もつ

 

鮟鱇(あんこう)   1首

  耳石器の平衡感覚試さるる宇宙飛行のガマアンコウは

 

イカナゴ   1首

  嘴にイカナゴあまた咥へたるウトウ帰り来の島に

 

イサキ   1首

  海流の出会ふ海域雲のごとイサキ大群ゆらめき育つ

 

岩魚   1首

  梓川早き流れを横に避け岩魚の黒き影ただよへり

 

ウツボ   1首

  縞々の皮強ければ人間の財布に変はるあはれウツボ

 

キントキ   1首

  水面をただに見つめて動かざり泡の吐息のチカメキントキ

 

クエ   1首

  動かざる青く濁れるクエの目にみにくき今日のわが映るらむ

 

コチ   1首

  白砂にからだ埋めてコチが見る夢やすからむ春の海底

 

セイゴ  1首

  釣られたるセイゴは紐に繋がれて秋潮寄する岸辺に泳ぐ

 

太刀魚   1首

  太刀魚の銀の刺身の一片(ひとひら)の旨味極まる雪国の酒

 

ハギ   1首

  沈船のデッキに揺るる藻を食めり戦後生まれのサザナミハギは

 

魴鮄(はうぼう)   1首

  美しき青き胸鰭魴鮄(はうぼう)の鎧兜が海底を這ふ

 

はまち。もじゃこ   1首

  もじやことふはまちの幼魚育みて流れ藻がゆく対馬海峡

 

ハヤ   1首

  水底に葉をひろげたる河骨に影を落とせる魚アブラハヤ

 

ヒラマサ   1首

  釣り上げしヒラマサ一本置きて去る五島の漁師無口なるかな

 

鮃(ひらめ)   1首

  大いなる鮃(ひらめ)の魚拓貼(は)り出せり薄日さしたる釣船の宿

 

目高   1首

  湧水の池の目高を写さむと四苦八苦せる吾と知らゆな

 

鰊   1首

  フィヨルドの入江に集ふシャチ家族鰊の群を尾鰭にたたく

 

鯊(はぜ)   1首

  九種類死滅回遊魚の中にハタタテハゼとサザナミヤツコ

 

ヨシノボリ   1首

  ヨシノボリ、カハニナ、サハガニ生かしめき谷戸里山の湧き水の口

 

わかさぎ   1首

  夜の川光あつれば数千の細身のナイフわかさぎのぼる

 

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わが歌集からー魚類(7/7)