天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

動作を詠む(2/3)

         祈る

  天地(あめつし)のいづれの神を祈らばか愛(うつく)し母にまた言問(ことと)はむ

               万葉集・大伴部麻与佐

*天地(あめつし): 「あめつち(天地)」にあたる上代東国方言。

  霰(あられ)降り鹿島(かしま)の神を祈りつつ皇(すめら)御軍(みくさ)にわれは

  来にしを         万葉集・大舎人部千文

  そのかみや祈り置きけむ春日野の同じ道にも尋ね行くかな

                  大鏡藤原道長

  うかりける人を初瀬の山おろし烈しかれとは祈らぬものを

                 千載集・源 俊頼

  民のため時ある雨を祈るとも知らでや田子の早苗とるらむ

               新千載集・後醍醐天皇

  生死(いきしに)の界(さかい)離れし君なれどなほ千代ませと祈らるるかな

                     落合直文

  耳澄ます人無きよしみづからが祈りのために撞き鳴らす鐘

                     中原綾子

  国超えて声なき民の聡明を今はいのりのごとく思はむ

                     近藤芳美

 

         拍手

  孤りする拍手はひびけつぎつぎに柄長(えなが)の落つるサーカスの森

                     前登志夫

  拍手して学生群に近づける妻の後方に妻より激(げき)し

                     岡井 隆

  拍手の中高座にのぼる落語家の孤立無援を思ひみるべし

                     島田修二

  前衛には遠き片隅の群れとして拍手をおくる一人一人の

                     岸上大作