天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

病葉(わくらば)

 「わくらば」は枯葉ではなく、蝕まれ変色した木の葉。青葉の中にたまたま一二枚残るところから「わくらばに」でタマサカの意味になる。

 

     病葉や学問に古る白浴衣        原 石鼎

     病葉落ちつちかづく僧に裏返る     吉岡句城

     病葉や来る日来る日が正念場      河村杉男

     病葉の散るに緩急弟亡し       松本千恵女

     病葉や秘すとはこころ詰るもの     山本夜光

 

  わくらばに問ふ人あらば須磨の浦に藻塩たれつつわぶと答へよ

                     古今集在原行平

  夏山のしげみが中の花なれや秋に先だつ露のわくらば

                       橘 保己一

  わくらばにわれら肉親あひよりて幾日を過ぎぬ父あらぬ家に

                        古泉千樫

 

病葉