天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

今年の短歌研究新人賞

 今年の受賞作は、ドラマの脚本のような構成であった。複数の登場者が五七五七七、の各句を述べるような地の語りに、一行の短歌が入るという構造の繰り返しである。初めの数行ほどをあげる。
          麦と砲弾         奥田亡羊
       兵士1 ニンゲンは
       兵士2 犬に食われてしまうほど
       兵士3 自由なりけり
       兵士4 空が青いな
  スタジオの光と闇の境界にストップウォッチの秒針見つむ
       兵士1 極楽の池に浮かんで見るような
       兵士2 極彩色の夕焼けである
  人あまた死にし野原にのんびりと夕焼け雲を置くホリゾン
            ・
            ・

こうした作りは、詞書の変形であり、岡井隆などの行き方の延長にある。
 従来の短歌研究新人賞応募作では、詞書の多い短歌作品は、あまり取り上げられなかった。今回のものは、詞書の変形が目立ったのであろう。評者の岡井は、舞台で朗詠してみるとよい、といった評を述べていたが、まさにそうであろう。