天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

膨張する短歌宇宙

 和歌・短歌は、わずか31文字の短詩型ながら、新しい表現方法が生み出されているため、短歌作品からなる宇宙は、いまだに膨張を続けている。
 古事記時代からの五、七、五、七、七の韻律、リフレイン、万葉集時代の枕詞、古今集時代の序詞、掛詞、新古今集時代の題詠、本歌取り、体言止、明治期になってからの詠む対象の拡大(正岡子規の短歌革新)、現代前衛時代の句割れ・句跨り・喩法(暗喩)、助詞の使い方、言いさし、口語短歌や文語口語ミックス短歌の隆盛、多様化する題材(映像、小説、絵画、音楽など)、他分野作品(現代詩、俳句など)とのコラボレーション、表記の多様さ(漢字、外国語、記号など) さらには空間配列としてのバリエーション(特に岡井隆の二次元図形的文字配置) 等の技法が背景にある。
 こうして作られた和歌短歌作品を鑑賞する側としては、作る側のこれら多彩な方法論とその効用をしっかり把握しておくことが必要になる。日本語の文法を踏まえた上で体系的な短歌鑑賞の辞典がほしいところである。わがライフワークとしてもよい。


[補足]
 勅撰和歌集では、正風体(裏に作為を込めないまっとうな詠み方)が中心だが、釈教歌の部立では、仏教の教えを詠んだ歌が含まれていた。これが、中世・近世になると大幅に拡大して、教訓歌(道歌)、諸道(鷹飼、蹴鞠、連歌、音曲、有職故実、武芸、茶道、華道など)の教訓歌、狂歌、落首、さらには呪文 にまで至る。短歌形式にすると覚えやすいという利点を活用したのである。