天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

デジャ・ビュ

 「俳壇」十二月号には、リレー競詠三十三句として、黛 執、片山由美子、秋尾 敏の三人が作品を寄せている。黛 執のものをいくつか次に挙げよう。

     ひとすぢの川を真中に盆の町
     *久保田万太郎の名句「神田川祭の中を流れけり」を
      連想してしまう。


     貝割菜夕日がやがや沈みけり
     *川端茅舎の名句「ひらひらと月光降りぬ貝割菜」を
      連想してしまう。


これら二句は、既視感を抱かせるので、損である。次の三句は佳いと思う。

     露の山よりひとすぢの仏みち
     *七・五・五の構成。山からみ仏が下りてくるような
      不思議な感覚を覚える。


     椋鳥の騒げるあたり暮れ残る
     *これは実景として誰もが経験する情景ではなかろうか。


     夕風に音の出てきし温め酒
     *夕風に音が伴う感覚もよくわかるし、それに温め酒とは、
      酒好きにはたまらない。