天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

寒牡丹

鎌倉本覚寺の初戎

 鶴ヶ丘八幡宮の牡丹苑では、寒牡丹が見頃になっている。牡丹は中国で薬用として栽培されていた。根が血行障害や鎮痛に有効といわれる。日本には8世紀に渡来した。普通に牡丹といえば、夏の季語になり、5月頃が花の盛りである。寒牡丹あるいは冬牡丹といえば、新年の季語になる。
 牡丹を詠った名歌は、すぐには思い出せないが、俳句にはいくつもある。

      牡丹切つて気の衰ひしゆふべ哉  与謝蕪村
      火の奥に牡丹崩るるさまを見つ  加藤楸邨


 一月十日は、初夷である。十日戎が季語の主題。傍題として、初夷、宵戎、戎笹、福笹、残り福 など。



      初春や若宮大路を人力車
      姫始人目気にせぬ鴨の朝
      ひさかたの光にひらく寒ぼたん
      朝光に番傘さすや寒ぼたん
      軒下の冬の陽だまり猫眠る
      たくましき欅あからむ冬紅葉
      読経聞く東身延の初えびす
      自刃せし矢倉の闇や笹子鳴く
      鎌倉や処々の神社のどんど焼


  初春のすがしき池にかしましく鴨と鴎と餌を取り合ふ
  朝の日に向ひて眠る水鳥の胸ふくらみて白くまぶしき
  大楠の根方に巻ける注連縄の幣しらじらと朝風に揺る
  金の烏帽子、白き水干 乙女らの艶にひかれて寄りゆく我は