天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

山門の酔芙蓉

鎌倉・極楽寺にて

  暑気おさまらぬ曇天の下、流れる汗を拭き拭き、鎌倉のわが定番の吟行コースを歩いた。即ち、極楽寺成就院長谷寺、光則寺と歩いた。


      雨あがる極楽寺門酔芙蓉
      百日紅高山樗牛ここに住む」
      足首に薮蚊がとまる写経かな
      鎌倉や大鉢に咲く大賀蓮
      ひぐらしや土牢の口暗きこと
      鳶啼けばひぐらし声をひそめけり


  今年また会ひにきにけり極楽寺庭に咲きたる花さるすべり
  美しき花に今年もまみえたり百日紅のちる極楽寺
  蜜蜂の羽音こもれるさるすべり庭にちりたる色のかなしき
  袂石、手玉石とぞ祀りたる景正公の神の依代
  幸綱の歌の彫られし梵鐘のしづもる横に咲く百日紅
  藤棚に藤の実垂るる弁天堂正座に耐ふる写経なりけり
  ナデシコ科マツモトセンノウ咲きにけり宮沢賢治の横長の詩碑
  梅の木にとび来てやをら鳴きはじむ命かぎりのつくつくぼふし
  石段に落ちたる蝉をとりあげて壁の上におく江ノ電の長谷