天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

アカカワイノシシ(ズーラシアにて)

 偶蹄目イノシシ科。豚の原種。「ゐ」「しし」とも言い、肉は山鯨とかぼたんと呼ぶ。山鯨は獣肉忌避時代の呼び名だが、ぼたんは唐獅子牡丹からきたという説と肉を薄く切って巻くと牡丹の花に似ているところからという説がある。
秋の季語であるが、これは晩秋になると里へ下りてきて田畑の作物を食い荒らすなど人間の生活との関りが深くなるからである。この猪を猟で捕えてぼたん鍋にする季節でもある。猪肉を焼豆腐、白滝、笹がき牛蒡、芹などと一緒に煮て醤油、粉山椒などで味をつける。


      銃口や猪一茎の草による    原 石鼎
      猪吊つて深熊野闇を濃くしたり 藤野智弘


  白き猪は神にあるべし黒滝の山下りきてわれは吹雪きつ
                     前登志夫
  有蹄類偶蹄目とぞ記されし囲ひに余る猪(しし)の
  勢(きほ)ひは            蒔田さくら子