天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

カラス

藤沢市・遊行寺にて

 遊行寺の境内を通ったら、えらい数のカラスが騒いでいた。原因になるような何も見当たらなかったのだが。


  葉の散りし欅の末(うれ)にカラスあまた朝を啼くなり
  墓地見下ろして


昔から烏はよく歌に詠まれている。鴉が象徴するものは、不吉なお告げの使者、狡猾と貪欲、誇り など。しかし、和歌や短歌では、こうした象徴性を詠みこんだ例は少ないようだ。


  あかときと夜烏鳴けどこの丘の木末の上はいまだ静けし
                   万葉集・作者未詳
  たぐひなく世に面白き鳥なればゆかしからすと誰か思はむ
                   金葉集・少将内侍
  山烏あけぬとつぐる一声に世はさまざまの音ぞきこゆる
                     千種有功
  晝渚人し見えねば大鴉はつたりと雌を壓へぬるかも
                     北原白秋


ちなみに、「短歌人」11月号では「鳥の歌」を特集。カラスについて、斎藤 寛さんが愉快な文章を書いている。