人名に興味を持って、いま万葉集を見返しているが、あらためて万葉集の若々しさを感じる。艶めかしいのだ。その典型が巻十「秋の雑歌」一連である。彦星と織姫の歌が、ここに集中している。少し抜き出しておく。
天の川楫(かぢ)の音聞こゆ彦星と織女(たなばたつめ)と
今夕(こよひ)逢ふらしも
彦星と織女(たなばたつめ)と今夜(こよひ)逢ふ天の川門(かはと)
に波立つなゆめ
君が舟今漕ぎ来らし天の川霧立ち渡るこの川の瀬に
天の川川門(かはと)に立ちてわが恋ひし君来ますなり
紐解き待たむ
彦星の川瀬を渡るさ小舟(をふね)のえ行きて泊(は)てむ
川津し思ほゆ