天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

鑑賞の文学 ―俳句篇(24)―

NHKのテレビ画面

     海峡の空吹き抜けよ大夕立   長谷川櫂


みちのくを旅して「奥の細道」を書きあげた松尾芭蕉は、大阪以西の西国へも旅立ちたいという思いを抱いていた。このことは弟子の記録からわかるという。そこで俳人長谷川櫂は「西国の旅は瀬戸内海や玄界灘などの航路をたどる“海の細道”だったのでは」と考えて、読売新聞社の取材協力のもと、NHK制作・著作で「俳句紀行シリーズ 海の細道をゆく」というテレビ番組をスタートさせた。

「俳句紀行シリーズ 海の細道をゆく」(全8回)は次のような内容であった。
   第1回 芭蕉の夢    芭蕉終焉の地、大阪・御堂筋から
   第2回 旅立ち     住吉大社、大阪湾、福原、一の谷、
               明石など
   第3回 扇の的     瀬戸内海、屋島、白峰御陵、金毘
               羅宮など
   第4回 ヒロシマへ   塩飽諸島、倉敷、ヒロシマ
   第5回 海に羽ばたく  芸予諸島(水軍の跡)、松山、
               周防大島など
   第6回 壇ノ浦     壇ノ浦、大宰府菅原道真)、柳川
              (白秋生家)など
   第7回 異国からの風  元寇の跡、唐津、平戸など
   最終回 長崎の祈り   長崎、壱岐芭蕉随行者であった
               曽良終焉の地)


 掲出の句は、壇ノ浦での作。ちなみに最終回で彼が詠んだ三句を次にあげる。

     長崎の大地吹き冷ませ秋の風
     吹きわたる松風白し曾良の墓
     西国をさすらひて秋惜しみけり


 解説の内容は、歴史の授業で習ったような既知のことが多いが、見どころは、景色と長谷川櫂の詠む俳句である。櫂の作はどこか蕉風を感じさせる点がおもしろい。次の本は参考になる。
     長谷川櫂『「奥の細道」をよむ』(ちくま新書