天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

鎌倉の山中にて

 スギ科の常緑針葉樹でわが国の特産。現在ではアジア各地に植林されて分布域が広がっている。長寿命で天然記念物の大木も各地にある。有名な産地の名を冠した吉野杉、秋田杉、屋久杉などがある。杉の古名は「まき」とされるが、古くは優れた用材となる樹木を「真木」と呼び、槙、檜、杉などが含まれていた。従って、古典和歌で「まき」が出て来ても必ずしも杉を詠んだとは限らないことになる。


  やまざとのみねのあま雲とだえしてゆふべ涼しきまきの下露
                 新古今集後鳥羽院
  雲ひくくおりてうごかず秋たけし谷に杉生は黒くしづまる
                     結城哀草果
  負を知らぬ容(かたち)と仰ぐ青杉の樹(こ)影(かげ)は地(つち)
  に濃き翳り置く            富小路禎子


  杉の幹に縦ざまにしてはしりたるその凍裂の深さを思ふ
                     岡部文夫
  祈りもて杉植ゑつぎし父の山 倒木の年輪ひざつき数ふ
                     阿部和子


 今年の杉花粉は、例年よりも多くなるという。憂鬱極まりない。