カイツブリ
カイツブリ科の鳥。湖沼や都会の静かな池にも棲む留鳥。鳰、モグリともいう。水上に水草を積んで作った巣は鳰の浮巣として、古歌、俳諧に詠まれている。
鳰(にほ)鳥(どり)の潜(かづ)く池水こころあらば君に吾(あ)が
恋ふるこころ示さね 万葉集・大伴坂上朗女
春の池の玉藻にあそぶ鳰鳥の足のいとけなき恋もするかな
後撰集・宮道高風
蘆の葉につなぐ浮巣も氷りつつすみあらしたる冬のにほどり
夫木抄・土御門天皇
水の街棹さし来れば夕雲や鳰の浮巣のささ啼きのこゑ
北原白秋
かいつぶりの頭ばかりが浮きてをり黒くちひさくをりをり動き
若山牧水
二人ゐて何にさびしき湖(うみ)の奥にかいつぶり鳴く(なく)と
言ひ出づるはや 高安国世
カイツブリくぐりし一羽待ちて啼く幼き声は親を呼ぶ声
武川忠一
かいつぶり頭(かうべ)小さく現るる冬の波紋の原点として
安永蕗子