夏のはじめ。はつなつ。梅雨に入るまでの爽やかな頃である。陰暦4月の異称でもある。
鸚鵡籠提げて水夫や初夏の街 安田北湖
はつなつのおほきな雲の翼かな 高田正子
初夏やあしびの若木まろがりて光る箱根の駒が嶽かな
与謝野晶子
はつ夏の日の照りわたる狂院のせとの土原(つちはら)に
軍鶏(しやも)むらがれり 斎藤茂吉
静脈がくまなく小枝広げゐて清(さや)かに初夏の謝肉祭なれ
大津仁昭
ブラウスの中まで明るき初夏の陽にけぶれるごときわが
乳房あり 河野裕子
うごくものなき朝なればひとりなればわが初夏をひた咲き
のぼる朱花 高安国世