天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

初夏(1)

小田原報徳神社境内にて

 夏のはじめ。はつなつ。梅雨に入るまでの爽やかな頃である。陰暦4月の異称でもある。


     鸚鵡籠提げて水夫や初夏の街    安田北湖
     はつなつのおほきな雲の翼かな   高田正子


  初夏やあしびの若木まろがりて光る箱根の駒が嶽かな
                     与謝野晶子
  はつ夏の日の照りわたる狂院のせとの土原(つちはら)に
  軍鶏(しやも)むらがれり         斎藤茂吉


  静脈がくまなく小枝広げゐて清(さや)かに初夏の謝肉祭なれ
                      大津仁昭
  ブラウスの中まで明るき初夏の陽にけぶれるごときわが
  乳房あり                河野裕子


  うごくものなき朝なればひとりなればわが初夏をひた咲き
  のぼる朱花               高安国世