天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

公魚(わかさぎ)

NHKテレビ「キッチンが走る」から

 キュウリウオ科の魚。千葉県、島根県より北の本州と北海道が原産だが、現在では人工授精卵の移植で多くの湖沼で増えている。汽水域、淡水域で獲れる。結氷湖での穴釣りは、テレビでもよく紹介される。塩焼き、天麩羅、フライ、佃煮などにして食べる。漢字では「鰙」とも表記。
 厳冬の時期に釣れる公魚が一番旨い。俳句では、春の季語。


     わかさぎを薄味に煮て暮色くる    桂 信子
     暗き湖より獲(え)し公魚の夢無数   藤田湘子


  水いろに生れてわかさぎ湖の渚に近くむれつつ遊ぶ
                    村野次郎
  北潟の鰙ここに白じろとこの春のときすずしかりけり
                    岡部文夫
  浄らなる湖(うみ)のわかさぎ傷みやすくはらわた破(や)れ
  て届けられたる           斎藤 史


  卵抱く公魚釣れば氷の上にいのちうすらに透きて跳ねるも
                    山名康郎
  一皿のわかさぎの眼と向きあへばすでにうつつの春の夕ぐれ
                   百々登美子
  わかさぎは卵をとられ死ぬといふみづうみに聞く春の叫喚
                    北沢郁子
  見るほどに素水(さみづ)すずしく走りをり子はわかさぎを
  うつくしみ食はず          坂井修一