天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

船の歌(6/10)

高瀬舟(webから)

 「蜑小舟」は、漁民の乗る小舟。「そほ舟」は、赤土塗りの舟。「高瀬舟」は、舳が高く底が平らの川舟。


  わたつ海は蜑(あま)の舟こそありと聞け乗りたがへても
  漕ぎ出でたるかな       拾遺集藤原道綱母


  水馴棹(みなれざを)とらでぞ下す高瀬舟月の光のさすに
  まかせて           後拾遺集・源 師賢


  松山の波に流れて来し舟のやがて空しくなりにけるかな 
                    山家集西行
  ふる川にかたぶきをれる捨舟のうかぶかたなく朽ちやはてな
               新撰和歌六帖・藤原信実
  春の夜のあけのそほ舟ほのぼのといく山もとを霞み来ぬらむ
                 続古今集・藤原良平
  秋ふかき八十宇治川の早き瀬に紅葉ぞくだるあけのそほ舟
                   玉葉集・順徳院
  舞姫のかり寝姿よ美しき朝京くだる春の川舟
                     与謝野晶子
  めぐすりを差したるのちの瞑目に破船のしづくしたたりにけり
                      葛原妙子