蜷
「にな」と読む。川蜷、海蜷などの巻貝を指す。川蜷は、貝殻が細長の円錐形で、ふつう頂部が失われ、殻高4センチくらい。殻表は黄褐色または黒褐色。蛍の幼虫の餌になる。俳句では、春の季語。
蜷の岸跔めば日ざしあふれけり 星野麦丘人
蜷の水翁の旅の果つるところ 上田えみ子
蜷の動き見つつ泉に春を待つはや幾年(いくとせ)の経験
となりて 土屋文明
蜷の腸(わた)箸の先にてつき刺せりこもれる仔をもさり
さりとかむ 土屋文明
水漬(みづ)きたる石菖の葉に蜷の児(こ)はいかなるさまに
生れむとすらむ 岡部文夫
袋川の飲み水いつも清かりしが蜷とりて食べし記憶鮮烈
倉片みなみ
蜷といふ貝楊枝もて取り出だすこと下手にして坐す花の宴
馬場あき子
皿の上に菜の葉を啖ふ川蜷を見つつたどきもあらぬ晩刻
後藤直二
川蜷のひと日の動きとどめたる泥にさしをり春の夕日は
中西輝磨