天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

月のうた(4)

立待月(web「天体写真集」から)

 目で見る限りでは、接近した月齢の月は、どれと指摘するのは難しい。やはり新月なり満月を目安にして、そこから何日目かと数えることが別に必要である。



  14日目  小望月: 満月(望月)の前夜の月。幾望。
             待宵(まつよい)。
       激浪にいろほのめくや小望月      山口青邨
       まだ旅のよそほひ解かず小望月     松本雨生
       待宵を霧間に佐久の山ざかひ      見学 玄
       待宵の山刀伐峠(なたぎり)ひそと子安神  斎藤夏風
     待宵のふけゆく鐘の声きけばあかぬ別れの鳥はものかは
                        小侍従『新古今集


  15日目  満月: 望月
     十五日(もちのひ)に出でにし月の高々に君をいませて何をか思はむ
                        作者不詳『万葉集
     願わくば花のしたにて春死なんそのきさらぎの望月のころ
                          西行山家集
     この世をばわが世とぞ思ふ望月の欠けたることもなしと思へば
                        藤原道長小右記


  16日目  十六夜: いざよい=ためらい
     山の端にいさよふ月を出でむかと待ちつつ居るに夜ぞ更けにける
                        作者不詳『万葉集
     いざよひの月はつめたきくだものの匂ひをはなちあらはれにけり
                          宮沢賢治
     雲透りくるいざよひの月のひかり澪ゆくごとく想とどまらず
                          森岡貞香
     十六夜の月木伝ひにのぼりゆく一夜過ぎたるものの軽さに
                          安永蕗子


  17日目  立待月: 「いまかいまかと立って待つうちに出る月」
       古き沼立待月を上げにけり       富安風生
       立待や舞茸ひそひそ太りつつ      赤尾兜子
     散りつくし涼しく撓う萩のうえ立待月はほの明りくる
                          山田あき