天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

風の詩情(9)

初秋の風(webから)

 前回の続きである。

 *日方(ひかた): 日の方から吹く東風、東南風、西南風。
   天霧(あまぎ)らひ日方(ひかた)吹くらし水茎の岡の水門
   (みなと)に波立ちわたる    作者未詳『万葉集


 *黒南風(くろはえ): 梅雨入り頃の南風
   一連のはだか電球かかげつつ高きに人のうごく黒南風
                      石本隆一


 *白南風(しらはえ): 梅雨明け後の南東季節風
   白南風(しらはえ)の光葉の野薔薇過ぎにけりかはづの
   こゑも田にしめりつつ         北原白秋


 *山せ: 山越えの風。夏に北海道や東北地方に吹く冷たい北東風や東風。
   勝ち負けの弓のやませに散る花をまとゐの外の人も見よかし
                      弁 乳母
   山せの風迫門横ぎれば/沖つ鳥かもめつかれて/海に入るかも
                      石榑千亦


 *あなし: 西北風、湿気をおびた強風。
   あなし吹く瀬戸のしほあひに舟出してはやくぞ過ぐる
   さやかた山を        藤原通俊『後拾遺集