星のうた(3/12)
以下で最後にあげる歌の作者下河辺長流は、江戸時代前期の歌人・和学者である。木下長嘯子に私淑し、俳諧連歌の祖西山宗因に連歌を学ぶと共に『万葉集』の書写・研究に努めた。星と螢の取合せは、平安朝以来の様式だが、「おちて石ともならぬ間」が新鮮。
ほしきよき夜半のうす雪空晴れて吹きとほす風を梢にぞきく
伏見院『玉葉集』
月や出る星の光のかはるかな涼しき風の夕やみのそら
伏見院『風雅集』
くらき夜の山松風はさわげども梢の空に星ぞのどけき
永福門院『玉葉集』
星おほみはれたる空は色こくて吹くとしもなき風ぞ涼しき
藤原為子『風雅集』
月ならぬ星の光もさやけきは秋てふ空やなへてすむらん
作者未詳『風雅集』
暁のほしのひかりもほのかにて名残をしたふ朝くらの声
作者未詳『新千載集』
あまつ星おちて石ともならぬ間やしばし河辺の螢なるらむ
下河辺長流『晩花集』
[注]右上の画像は、web「天体写真の世界」
http://ryutao.main.jp/my_large.html
から。