天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

天空のうた(10)

月の空

 藤原忠隆の歌は、彼のおおどかな性格を反映している。即ち、「数国の刺史を経て家富財多し。性、鷹、犬を好む。人がため施しを好み、その報いを望まず。世、その態度に伏す」(信西本朝世紀』)と称賛されたように、大きな器量の持ち主であった。


  いづくにもこよひの月を見る人の心や同じそらにすむらむ
                  藤原忠教『金葉集』
  ながむればふけゆくままに雲晴れて空ものどかにすめる月かな
                  藤原忠隆『金葉集』
  すみのぼるこころや空をはらふらむ雲のちりゐぬ秋の夜の月
                  源 俊頼『金葉集』
  夜を深み帰りし空もなかりしをいづくより置く露にぬれけむ
                  清原元輔『詞花集』
  今日よりは天の川霧たちわかれ如何なる空にあはむとすらむ
                  清原元輔『詞花集』
  月はいり人は出でなばとまりゐてひとりやわれは空をながめむ
                 大中臣能宜『詞花集』
  思ひかねそなたの空をながむればただ山の端にかかる白雲
                  藤原忠道『詞花集』