天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

住のうたー家・庵・宿(13/14)

  さびしさに宿を立ち出でて眺むればいづくもおなじ秋の夕ぐれ

                  後拾遺集・良暹

  大はらやまだすみがまもならはねば我が宿のみぞ煙たえける

                   詞花集・良暹

*「大原に住んで、まだ炭を作るすべも習っていないので、自分の家だけが煙が絶えている。」

 

  板間より月のもるをも見つるかな宿はあらして住むべかりけり

                   詞花集・良暹

*「板の隙間から月光が漏れるのを見たことだ。庵はこのように荒して住むのがよかったのだなあ。」

作者の良暹(りょうぜん)は、平安中期の僧侶歌人比叡山の僧で祇園別当となり,のちには大原に隠棲したことが知られる。

 

  年ふれば荒れのみまさる宿のうちに心ながくもすめる月かな

                後拾遺集・善滋為政

  住む人のかれ行くやどは時わかず草木も秋の色にぞありける

               後拾遺集・藤原兼平母

*かれ行く: 「離れ行く」で、疎遠になってゆく の意味。

 

  もろともにながめし人も我もなき宿にはひとり月やすむらむ

                後拾遺集藤原長家

  つくづくと荒れたる宿をながむれば月ばかりこそ昔なりけれ

                 詞花集・藤原伊周

  住みなれし宿をば出でて西へゆく月をしたひて山にこそいれ

                 千載集・平 実重

 

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京都・大原