霊魂のうた(7)
たましひといふおぼろなるもの包み雨季のブラウス透け
やすきかな 雨宮雅子
わが魂(たま)は池の辺杉の穂経(へ)めぐりていつしか戻り
夢に入りくる 加藤克己
魂を買ひし男が革袋を提げてミモザの下にいりゆく
小畑庸子
きらめける海を南に切りてゆく舟あり一望の中の魂
藤岡武雄
魂とびて彗星となる譬へ良し昼のソファアに束の間を寝る
棟居千鶴子
ころころと何かころがる音きこゆ夜ふけて人の魂を抜くらむ
安田純生
魂までは売らぬと君はいうけれど買う人のない魂もある
岡部桂一郎
魂は呼べば帰るか在りし日の笑ひは吾は見下ろしをれども
小暮政次
一首目からは、肉体を感じてしまう。二首目では、どこまでが夢か分からないが、多分、池の辺の杉の穂を見て何か気にかかっていたのであろう。それが夢にまで出てきた、ということか。三首目は、「魂を買ひし男」をどう解釈するか。金にもの言わせて女性の心をつかんだか。岡部桂一郎の歌が参考になるかどうか。小暮政次の擬人法は、あまり楽しい思い出を感じさせない。