命の歌(15/17)
空の辺にいのちをのべて啼くものの晨(あした)の声よいづこより来し
清原令子
千日に足らぬ命をはかなめば今朝若竹に露しとどなり
楠瀬兵五郎
ちちのみの父の命と引き換へに百首の歌を我は賜る
平田利栄
*父の臨終に際して評価の高い百首の歌を詠んだ、ということであろう。
生きて見むさまざまの虹ひとたびは松にかかりていのちこぼせよ
*暗喩を用いて詠んでいる。
拾ひもののいのちならねば日の暮の庭にてわれは手を振りあるく
竹山 広
*竹山広は長崎で結核療養中の病院で被爆する。そこで助かった命は、決して拾い物などではないのだ。
投げ出されてひくひくしてる魚でも生命あるうちは生きてゐるのだ
小暮政次
いのちの事ですいのちの事ですよ降る日ありとも荒るる日ありとも
小暮政次
眠りをよろこびとして支へとして生きゆかむかな残る命を
小暮政次
*小暮政次は日々、命を意識して短歌を作ったようだ。