水のうた(13/17)
朝霧の徐々に霽れゆく十和田湖の真水(まみず)の蒼に惹き込まれたり
市川定子
流るればまた美しき冬水のひびかふまでに山は枯れたり
水本協一
濠水の底なる冥き日輪にるいるいとして蝌蚪(くわと)らむらがる
杜沢光一郎
村境をのつたりとゆく春の水さみしき腹を見せて流るる
大山節子
*擬人法だが、「さみしき腹」としたところが共感しにくいかも。「のつたりと」
と合わない。
水のみが見たりし月もありぬべし朝素甕の水くつがへす
築地正子
*くつがえす前の水に思いをはせている点がユニーク。
とほき日に水より生まれ咎を積むわが体内をめぐるみづあり
田村美智代
*体外の水と体内の水とを対比させているが、咎を積んだわが身の内の水は汚れて
いる、といっているようだ。
行方なき堀の水にて石垣を打つのみ波はくり返しつつ
古田昭子