天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

月の満ち欠け(3/4)

新月: 月が見えない時期のため、三日月から逆に遡って、朔の日付を求めた。英語の
    呼び名(new moon)が元になっている。

 

  よかれそむるねまちの月のつらきより二十日のかげも又や隔てん
                   風雅集・藤原為兼
*人の訪れを待ち焦がれている夜。寝待月(19日頃)は、横になって待たないと
 ならないくらい月の出は遅い。翌20日は、更待月で夜更けに昇る。


  立ちまちの月と匂ひて花薄ほさかのみ馬引きのぼる見ゆ
                       小沢蘆庵
*保坂(ほさか)は、現山梨県韮崎市穂坂町地区にあたる。そこには穂坂牧という御領
 牧場があり、名馬の産地であった。


  日を読めば二十日の月を天の原の高山の上に迎へつるかも
                      伊藤左千夫
*高山の上に二十日の月が出た、ということ。


  三日月の光幽(かそ)けき木がくりの庵にかへりて心やすらふ
                       島木赤彦
  わが世をばおもひわづらふ柴の戸に梅が香さむき片われの月
                       金子薫園
*片われの月とは、半分またはそれ以上欠けている月。『片われ月』は、金子薫園の
 第一歌集で、明治34年(1901)刊。


  三日月の立てる宵かもななめ松しげき枝葉をとほすひくさに
                        岡 麓
*ななめ松とは、倒れそうなくらいに斜めに生えている松の木。


  凍空(いてぞら)に陰なす魄(たま)をかき抱くかぼそき月よ妹ぞこほしき
                       吉野秀雄
*「かぼそき月」をその上の句が修飾している。作者の心象風景。言いたいことは、
 結句。

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三日月