天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

現代短歌の表現(1/5)―はじめに

 小島熱子さん(「短歌人」所属)の第五歌集『ポストの影』(砂子屋書房)を読んだ。様々な観点から吟味してみて、目立つ特徴として、次の4項目がある。
◆外国語(カタカナ語)の使用  ◆破調  ◆ひらがな表記  ◆一字開け
これらの多くの作品を読んでいるうちに、現代短歌の表現という課題をあらためて考えてみたくなった。
 周知のように和歌は、日本固有の語(やまとことば)や歌語を使って詠まれた。時代が進むにつれて、漢語その他の外来語が取り込まれた。現代にあっては、諸外国の地名や衣食住の文化、芸術などが自由に享受できる。和歌から進展した現代短歌にあっては、当然この状況を反映することになる。そこで課題として、和歌短歌の韻律との共存、歌語(和歌に用いられる言葉や表現)との折り合いのつけかたが浮上する。
 和歌短歌の詩情は、聴覚のみならず視覚からも感受される。雅なひらがなと硬質な漢語や武骨なカタカナ語との共存の工夫が必要になる。現代の前衛短歌では、塚本邦雄が積極的に取り組んだが、表現論にまでは至らなかったようだ。
 以上のような課題を、歌集『ポストの影』からいくつか例を引いて明らかにしようと思う。
読者諸氏は、ぜひこの歌集からさらに多くの例歌を見つけて頂きたい。なお、ここでは触れないが、この歌集には擬人法、オノマトペ・リフレイン、直喩 などの作品も多いので、併せて鑑賞いただきたい。

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小島熱子歌集『ポストの影』(砂子屋書房