天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

身体の部分を詠むー髪(4/13)

 白髪の歌について。白髪を厭ったり婉曲に表現するために、頭の雪、元結の霜、白き筋などといろいろに比喩した。

  降る雪の白髪(しらかみ)までに大王(おほきみ)に仕へ奉れば貴(たふと)くもあるか
                    万葉集・橘 諸兄
  春の日の光にあたる我なれどかしらの雪となるぞわびしき
                    古今集文屋康秀
  くれてゆく秋のかたみにおくものは我がもとゆひの霜にぞありける
                    拾遺集・平 兼盛
  年経とも越(こし)の白山(しらやま)忘れずは頭(かしら)の雪をあはれとも見よ
                   新古今集藤原顕輔
*白山に詣でたことを思い出し、日吉七社の一つで祭神が白山の神と同じであることを念頭にして詠んだもの。「白山」➡「雪」➡「白髪」という連想において、老い行く我が末を神に祈った。( www.geocities.jp/keisukes18/sinkokin192.html「新古今和歌集散歩」から引いた。)

  年経ればさむき霜夜ぞ冴えけらし頭(かうべ)は山の雪ならなくに
                    金槐集・源 実朝
  くれてゆく年のはや瀬の水上は白き筋こそ落ちまさりけれ
                        賀茂真淵
源実朝賀茂真淵の歌は、いずれも年をとって白髪が増える心配を詠んでいる。

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白髪