身体の部分を詠むー足(5/8)
混雑に立ち得ぬ脚をあきらめて終の別れに行かず許せよ
落合京太郎
*落合京太郎は、本名・鈴木忠一。東京帝国大学法学部卒後、各地地裁判事、最高裁人事局長、司法研修所所長などを経て弁護士となる。そのかたわら、大正14年アララギ会に入会し、土屋文明に師事した。86歳で逝去。歌においては、誰との「終の別れ」なのか、この一首だけでは不明。
身を繫(つな)ぐ何のなければ夏穂草さやる素足の痒くてならぬ
佐伯裕子
*初句二句は、頼りない身の上を比喩しているようだ。「さやる」は、触ること。
ひた焦がれ野心に灼かれ二十歳(はたち)なるわが寒き脚つつみしリーバイス
島田修三
*リーバイス(正式名称:リーバイ・ストラウス)は、アメリカ合衆国を拠点とするアパレルメーカーであり、ジーンズのブランド。
足長のものならグラスも馬も好き階段のぼる恋人はなを
松平盟子
太ももが左右がっしと前に出てパリの舗道をどこまでも踏みし
松平盟子
夜となりて雨降る山かくらやみに脚を伸ばせり川となるまで
前 登志夫
*作者は、昭和58年以降、吉野に住み家業の林業に従事しながら、同地を中心に歌人活動を継続。アニミズム的な宇宙観・生命観の短歌を詠み続けた。
なほ残る光の如きものあれば足弱れどもわが立たむとす
扇畑忠雄
*扇畑忠雄は、94歳で亡くなったが、死亡原因は扇畑の遺言により非公表となっている。