やま里にうき世いとはむ友もがなくやしく過ぎしむかし語らむ
新古今集・西行
ながむるに慰むことはなけれども月を友にてあかす比(ころ)かな
新後撰集・西行
ありあけの月よりほかに誰をかはやま路の友とちぎり置くべき
新古今集・寂超
とまるべきやどさへみえぬ夕霧に友よびかはす野辺の旅人
耕雲
酒のまむ友どちもがもしくしくに雨の降る夜は寂しきものを
和田厳足
*しくしくに: 絶え間なく。しきりに。
枕べに友なき時は鉢植の梅に向ひてひとり伏し居り
正岡子規
友をれど言問(こととひ)もなく身のまはり空しくなりて二時間あまり臥す
斎藤茂吉
*言問: 物を尋ねかけること。言葉を交わすこと。