住のうたー窓・戸・玄関(3/5)
対称形に並びいる窓おのおのにせめて異形の湯の煙あれ
市原志郎
*並んでいる窓がみな同じに見えたのだろう。下句から想像するに温泉宿なのだろうか。「異形の湯の煙」とは、何を期待しているのか。
人の生活(たつき)おぼろに透かす玻璃窓に執して蔦は紅葉し迫る
富小路禎子
朝の日のさし入る窓に古今集おほなほびのうた声にして読む
春日井曠
*古今集おほなほびのうた: 古今和歌集・巻第二十に、大直毘(おほなほび)の歌
新しき年の始めにかくしこそ千年(ちとせ)をかねてたのしきを積め
がある。意味は、「新しい年のはじめにあたって、このように千歳を目指し楽しきことを重ねよ。」
ニ短調の青空ひびく窓にして燦々と降る誰が泪かも
櫟原 聡
*全体が比喩になっているが、鑑賞に困ってしまう。
まりあまりあ明日あめがふるどんなあめでも 窓に額をあてていようよ
世事一つやり終えしのち遠雷を聞くべく開く窓は北向き
市原志郎
窓の外(と)の手すりの鉄におとたてつあけがたちかき霰こまかに
山田富士郎
ただ坐る他なき窓辺ひと等みな去りつ晩夏の光の中を
光栄尭夫
*どんな事情でひと等が集まったのか不明だが、みんなが去った後は窓辺に坐る他ないとは、よく分かる気がする。