恋(7/13)
海哀し山またかなし酔ひ痴(し)れし恋のひとみにあめつちもなし
甕(かめ)ふかく汲(く)みたる水の垢(あか)にごりさびしき恋もわれはするかも
古泉千樫
*結婚前の妻「きよ」との恋を詠んだもの。
プラタナス黄ばみ吹かるる街にしてギヴアンドテイクの恋ばかりみる
泥足に踏まれし若さ戦後派にプラトニックといふ恋はなし
*北海道帯広市出身の中城ふみ子は、様々な男性と浮名を流した。こうした恋の中身を振り返っての内容であろう。
恋をすることまさびしき十二月ジングルベルの届かぬ心
俵 万智
君と食む三百円のあなごずしそのおいしさを恋とこそ知れ
俵 万智
恋という遊びをせんとや生まれけん かくれんぼして鬼ごっこして
俵 万智
*二句三句は今様の歌謡集である『梁塵秘抄』にある有名な歌詞。