天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

わが歌集からー鳥類(12/15)

アジサシ   3首

  アジサシは卵抱きて動かざり砂地に迫る雨期の川水

  あはれはやチョウゲンボウと野良猫が狙ふ川原のコアジサシの子

  美しき小石敷き詰め葬られし少年の骨アジサシを抱く

 

郭公   3首

  おほいなるボルガに沿へる林よりかすか聞こゆる郭公の声

  つれあひを求めて競ふ郭公の声のとび交ふ青き湖

  くれなゐの口はかなしも底知れぬ食欲持てる郭公の雛

 

カンムリサケビドリ   3首

  かくかくと水飲むカンムリサケビドリ居眠るもゐて静かなる夏

  餌箱の雛を目守りて静かなりカンムリサケビドリのつがひは

  肉垂るる喉(のみど)鳴らして威嚇せりカンムリサケビドリの夏来る

 

蝙蝠(こうもり)   2首

  天井に三つ蝙蝠はりつけり水子の霊と知りてさしぐむ

  豚小屋の地面を跳びて近づけり眠れるブタに血吸ひ蝙蝠 

 

鷹   2首

  散弾を浴びし小鳥を喰みしとふオオタカ死せり鉛中毒

  山の端の小さき祠に額づけり子のため一羽の鷹もらはむと

 

駄鳥   2首

  灼熱の陽に立てる身の影の中駄鳥の母は雛を眠らす

  朝くれば黒き駝鳥のたのしみか檻掃く人につきて歩くも

 

千鳥   2首

  砂浜に棲むシロチドリ白砂に卵ひとつを抱きて鳴きけり

  砂浜に居眠る千鳥人影のさせば目覚めて群れ走るなり

 

チョウゲンボウ  2首

  岩走るオコジョ狙ふかチョウゲンボウ羽ばたき浮かぶ北岳の空

  街川の橋のパイプに今年もやチョウゲンボウが子をはぐくめり

 

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アジサシ