わが句集からー春(4/21)
平成八年
客待ちのタクシー涼むプラタナス
左義長の炎に力む達磨かな
手で磨く北山杉のあたたかき
物干しに声掛け合へる四日かな
浅くなりまた深くなり貘枕
白秋の部屋の畳の手鞠かな
江ノ島や今年も買ひし根の若布
奥深く秘めたる決意臥龍梅
紅梅や幼きものの恋明り
初恋のときめきめくや春の星
そり返る春告魚の姿焼
とほざかるシュプレヒコール梅匂ふ
辛夷咲く誰もゐぬ世の明るさに
初蝶や銅像はるか天を指す
伊豆山へ桜並木の石の階
春雨や柳川をゆくどんこ舟
しのばせて胸ポケットの沈丁花
春の闇子は化物になると言ふ
朧夜の百武彗星見えざりし
議事堂に花びら流れ星条旗
雪解けの野に斎場の新しき
御廟所の漢詩碑文や梅白き
花あれば茣蓙敷くわれら日本人
螢烏賊青き光の網揺るる
走り湯や伊豆山までの花の階
行く春や押し花習ふ植物園
空高く集ひて啼くや夕燕
ゼブラゾーン塗り直しあり四月馬鹿