天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

わが句集・平成二十五年「大道芸」

     秋まつり大道芸も島に来て

     実柘榴に怒りの顔のありにけり

     ジャンパーの袖に執着ゐのこづち

     小吉の御神籤むすぶ紅葉かな

     落柿舎の庭ひびかせて鹿威し

     懸崖の真白き菊や天守

     ひこばえや村社にふたつ力石

     笹子鳴く道の右藪左藪

     しきしまの大和は柿と青空と

     掃くほどに大銀杏ちる総本山

     竜胆のつぼみ咲き初むさざれ石

     見上ぐれば花の回廊西行

     薄氷の田の面まぶしむぬかり道

     初春の庭に飛び立つ竹トンボ

     石仏に供へし蜜柑リスが食む 

     白梅や老いたる幹の芯は洞

     白梅の枝垂るる先に元使塚

     咲き満ちて沈黙ふかき桜かな

     春の日の水琴窟にあそびけり

     うぐひすのこゑ初々し石地蔵

     小田原城さくら吹雪の天守

     花を見る絵島囲ひの狭き部屋

     何鳥かルルリリと啼く若葉風

     冷奴大山豆腐また旨し

     幻の瀧を冷して飲み干しぬ

     吾妻山木蔭に蝶々もつれあふ

     緑陰に弓引き絞る閻魔堂

     月天心球場を去る人のむれ

     紫陽花の下に子雀親を呼び     

     柏槙のねぢれにねぢれ大緑蔭

     鎌倉のやぐら涼しき虚子の墓

     雪踏んで子等一列に登校す

     鉢植ゑの蓮の実がとぶ軒廂

     母逝きて年改まる六畳間

     点滴の管につながれ母の夏

     突堤の釣果やいかに赤とんぼ

 

実柘榴