天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

牧水の住まい

 昨日発売された角川『短歌』八月号の題詠「おぼろ月」青井史選に次の歌が入っていた。
     残業の火気当番を終へて出づおぼろ月夜の工場の門
「火気当番が具体的で仕事の内容も伝える」との選評。


 実は、塚本邦雄追悼号になるのでは、と期待していたのだが、それは九月号になるとのこと。今回は、若山牧水生誕百二十周年記念ということで、「牧水の巡った町」という特集になっている。ここでは書いていないが、牧水家族がどこに住んでいたかを知っておくことは、重要と思う。年譜で調べてみた。独身時代は別として次のようである。


小石川区大塚窪町(大正二年)→三浦半島下北浦村(大正四年)→小石川区金富町(大正五年)→巣鴨町(大正八年)→沼津楊原村上香貫(大正九年)→沼津千本浜(大正十三年)→沼津市道町千本松原(大正十四年)


 まことに目まぐるしい。加えて何度も歌誌の創刊と廃刊を繰り返している。妻子は大変であったろう。墓は、妻の喜志子と並んで沼津市浜道乗運寺にある。墓前には、白く細い2本の石柱があって、夫妻の歌がそれぞれ彫られている。
   聞きゐつつたのしくもあるか松風の今は夢ともうつつ
   ともきこゆ                牧水
   故里の赤石山のましろ雪わがゐる春のうみべより見ゆ
                        喜志子