天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

句帳と作品

 飯島晴子の残された句帳の内容と作品の関係を論ずる興味深い新連載(小川軽舟)が、「俳句研究」新年号で始まった。飯島晴子は吟行して俳句を作る習性の俳人であったが、句帳には印象なり見たものについての言葉の断片が散らばっているだけで、俳句の形をなす言葉は少なかった、という。
       コマの跡、泥水流れ、菩薩
       蛇苺
       青梅 国東塔にふれ
       青梅ふるる国東塔
       夏鶯 こだわっている
       水口の水すこしうごき
       上の田に映るもの影
       水口の石
       田水の音

これらが螺旋綴じのメモ句帳にちびた鉛筆で書かれた断片であった。
そこから次の佳句が生れたという。
     菩薩絵に水の跡つく揚ひばり


吟行にいったらその場ですぐに俳句や短歌の形にしようとするわがせっかちな習性は、改めるべきであろう。