天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

現代の定家(7)

 塚本の戀の歌の続き。「水銀傳説」は、ヴェルレーヌランボーの同性愛を歌った連作である。ヴェルレーヌからランボーにあてた五十首と、ランボーからヴェルレーヌにあてた五十首の二部構成をとる。

  五月新緑みなぎる闇に犯しあふわれらの四肢の逆しまの枝
  われの耀くいづこを狙ひ荒淫の彼の手のわななける拳銃

  *一八七三年、ランボー十九歳。七月十日、ヴェルレーヌ
   別れたいと言い出して怒りを買い、ヴェルレーヌランボー
   に向かって拳銃を発射した。左手首に負傷した。
   この時のランボーの立場で詠んだ歌。
   なお、ヴェルレーヌランボーに会ったのは一年前で、
   彼が二十八歳のとき、そして家庭を捨てた。