理知的な俳句
「俳句研究」四月号特別作品33句は、「狩」主宰・鷹羽狩行の制作で、「花鳥の世」という題。鷹羽狩行の俳句は、きわめて理知的である。うまいなあと思う反面、作り物・嘘くさい・鼻につく といった感じを受ける句もある。
うまい作品:
人界をうかがふごとく春の雷
*「うかがふ」に説得力あり。
きさらぎや沿えば疎水の速くなり
*京都の疎水を見て知っている人には、この感じがよくわかる。
帆はいつも夢のかたちに春の昼
*我々の胸の内をうまく言い得て妙。そして「春の昼」が
効いている。
鼻につく作品:
穴を出しことに驚き蛇走る
*一読した時、多分、文脈が不明と思うはず。自分で穴を出て
いながらそれに驚くとは、つくりものくさい。
鳥雲に入りたれば雲閉ざしけり
*座五が鼻につく。
揚雲雀おのれの声は越えられず
*これも理屈そのもので面白くない。
わからない作品:
貝寄風や翼あるかに身を反らし
*身を反らせる主体が不明、翼があることと身を反らす
ことの関係がつかない など。
囀りやとんと見かけぬ一軒家
*何を見かけないのか?以前そこにあった一軒家が近頃は
見かけない、ということなのか?
逆立ちに地球の重みうまごやし
*うまごやしが逆立ちしているのか?地球の重みがわかるのか?
こうもわからないと、理知的にしようという姿勢が透けて
見える。