天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

葛の花

逗子・岩殿寺にて

 マメ科のつる性多年草秋の七草の一つ。根は葛粉の材料、薬用にもなる。大和の国の国栖(くず)が葛粉の産地であったところから命名された。葉が風にひるがえると裏の白さが目立つことから「裏見草」ともいう。「裏見」を「恨み」に掛けた和歌も詠まれた。



  秋風の吹きうらがへす葛の葉のうらみてもなほ
  うらめしきかな       古今集平貞文
                  
  おのづから秋はきにけり山ざとのくず這ひかかる槙のふせやに
                金葉集・源経信
  葛の花 踏みしだかれて、色あたらし。この山道を行きし人あり
                    釈 迢空


俳句では秋の季語

     あなたなる夜雨の葛のあなたかな  芝不器男
     葛の蔓ひたすら垂れて地を探す   沢木欣一
     索道の奈落へさそふ葛あらし    能村登四郎
     葛の花トンネル口は風に満ち    鷹羽狩行


なお、引用はしないが、万葉集には、二十一首ばかり詠まれている。

 逗子の岩殿寺に行った。奥の院から山上の吉祥塔までを歩く。葛の花が散っていた。


      葛ちるや正教観音吉祥塔
      秋風や樹々の声聞く観世音


  御詠歌の碑のならびたる参道に葛の花ちる秋ふかみかも