天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

鑑賞の手掛りー詞遊びー

 和歌・短歌を鑑賞する際の手掛りとして今まで触れなかった事項に、「詞遊び」の技法がある。
『和歌の本質と表現』(勉誠社)で、歌人の紀野恵が書いている。以下要約。

1.聴覚型(音楽的な詞遊び) 耳で聴いて理解できること。
 a.掛詞 同じ音の詞が異なった意味の二つ以上の別の言葉で
   ある性質を利用したもの。
     ほのぼのとあかしの浦の朝霧に島がくれゆく舟をしぞ思ふ
                    古今集・読み人しらず

 b.オノマトペ(音を表す詞)
     たんたらたらたんたらたらと雨滴が痛むあたまにひびく
     かなしさ               石川啄木
                         

2.視覚型(文字にして目で確かめて面白さのわかるもの)
 a.回文(上から読んでも下から読んでも同じ歌)
     ながきよのとをのねぶりのみなめざめなみのりぶねの
     おとのよきかな

   結句だけを回文にした例
     絶望より脱帽だよと一郎は禿に虹たて「浦和で笑う」
                        高柳蕗子

 b.物の名(詞の中に題を隠した歌)
     かづけども波のなかにはさぐられで風吹くごとに
     浮きしづむ玉             紀貫之           
     *「かにはざくら」を隠す。

 c.折句(各句の初めに物の名の一字を折り込んだ歌)
     からころもきつつなれにしつましあればはるばる
     きぬるたびをしぞおもふ        紀貫之           
     *「かきつばた」を各句の初めにおく。

     をぐらやまみねたちならしなく鹿のへにけん秋を
     しる人ぞなき             紀貫之       
     *「をみなへし」を各句の初めにおく。


3.その他
     夜は夜で聖地モデンナにぎやかに天使ぺてん師行き
     交う通り               高柳蕗子
     *固有名詞らしいが実は言葉をさかさまに入れている。


 ことわり書きがないと読者は気づかないかも知れないし、気づいたとして一首の情緒が深まるかは疑問。なんだ遊びかと片付けられてしまう。
 作者は遊びを楽しんでいるから、それでよいのだ?!