天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

宮 柊二のうた世界

 今日は、岐阜市の隣の稲沢に日帰り出張してきた。車中で、角川「短歌」十二月号を読んだ。小池 光の連載「短歌人物誌」は毎号楽しみに見ている。今月号の特集は、没後二十年ということで宮 柊二についてである。何年も前になるが、岩波文庫の宮 柊二歌集を持ち歩き、よれよれになるまで読みふけったことが懐かしい。今回の特集で、あらためて彼の歌の特徴が整理されているので、参考になった。いくつかあげておく。


 *「ごと・ごとし」の直喩が多い。
   荒び男の如く雁木を奔りゆく吹雪ぞ見ゆれ常のまぼろし
   戸を引けばすなはち待ちしもののごと辷り入り来ぬ光といふは


 *リフレイン、対句表現の多用
   含みたる寒紅梅あり眼鏡あり机上に現在ありまた未来あり
   過去多くなりしとおもふ言ひがたく致しかた無く過去積りゆく
   田より田に水かよふ音田の畦の草間の籠る虻の翅音
   わが部屋は板戸硝子戸障子戸に貧しきものの病やしなふ


 *副詞「つつ」の多用
   山椒の揺るる葉影を宿しつつ電柱は立つ乾ける白昼
   籠りつつ今朝は見てをり庭すみの萩吹きてゆく風の行方を