星のうた(7/12)
星の中でも特に明るいものは、天体望遠鏡が出現するはるか以前から注目されている。その代表が金星で、「宵の明星・明けの明星」「夕(ゆふ)星(つづ)」「あかぼし」などと呼ばれた。
夕星(ゆふづつ)も通ふ天道(あまぢ)をいつまでか仰ぎて
待たむ月人壮士(つきひとをとこ)
柿本人麻呂歌集『万葉集』
玉すだれまきあげてみん夕つづの星のまぎれに螢とぶかげ
後柏原院
東屋の軒の垂氷(たるひ)にうつろへる光も寒きあかぼしの影
加藤千蔭
明星(あかぼし)のひかりは冴ゆる夕山の片空明り雪さやに見ゆ
尾上柴舟
さしのぼる夜なれの月の腋仏金星ちさく暗くまばたく
尾山篤二郎
冴えわたる気(け)ぶかき空に三日の月宵の明星(あかぼし)と
息づきかはす 吉野秀雄