天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

小池光の短歌―ユーモア(18/26)

◆把握・認識の仕方 2/2


  たちまちに椈(ぶな)の大樹を布にまくたくみのわざを驚いてよい 
                                                 『滴滴集』
  ラーメンの喜多方をふかく意識する餃子宇都宮思へば泣かゆ 
                         『時のめぐりに』
  馬の名の「チカテツ」にわれおどろけば「ヒコーキグモ」に更に驚く
  目と目とが合ひしばかりに武富士ティッシュはまたもくばられてしまふ
  「バグダッドの虐殺」として世界史に刻まれむことはじまらむとす 
  『暗黒日記』かくれ読みつつわれのゐる場所が世にいふ教員会議 
                          『山鳩集』
  亡くなりてきみ五月(いつつき)となれる間にありとあらゆることが起きたり 
                        『思川の岸辺』
  感冒に粉末トカゲが効くといふ東洋医学にしたがふべきや 
                          『梨の花』
  その名前机竜之介と出るまでに二分(にふん)三分(さんぷん)悶絶のくるしみ    
  フィリピンの人と再婚しないでと長(をさ)のむすめが真顔にて言ふ  

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歌集『時のめぐりに』