あの世のこと(2/6)
いかでいかで恋ふる心を慰めてのちの世までのものを思はじ
よしさらば後の世とだに頼めおけつらさに堪へぬ身ともこそなれ
*藤原俊成が、妻(藤原定家の母)になることになる美福門院加賀 に贈った歌。
「よし、それならば、せめて後の世に会おうとだけでも約束してください。あなたの冷淡さに耐えられず死んでしまう わが身かもしれませんから。」
思ふべき我が後の世は有るか無きか無ければこそは此の世には住め
いつ嘆きいつ思ふべきことなれば後の世しらで人の過ぐらむ
*「どの時に歎いたり、どの時に気を病んだりすべきということで考えると、あの世のことは見当もつかず人々は日々過ごしているようだ。」
久(ひさ)に経てわが後の世をとへよ松あとしのぶべき人もなき身ぞ
*「庵の前の松の木よ、久しくながらえて、 私の後生をとむらってくれ。 私を思いだし、私の跡をしたってくれる人とてない孤独の身なのだ。」
死なばやとあだにもいはじ後の世は面影だにも添はじと思へば
新勅撰集・俊恵
*「あの人が忘れられず、いっそのこと死にたいなどと軽はずみは申すまい。
あの世では、あの人の面影すら寄り添ってはくれないだろうから。」