天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

措辞が気になる

昨日発売された「俳句研究」7月号を読んだ。
3ヶ月連続競詠ということで、新たに中田尚子(「百鳥」所属)と小澤實(「澤」主宰)が20句づつ発表している。これらの内、よく判らない気になる句をあげておく。

中田尚子の作品から。

  心太突くだけ突いて遊び出す
  *結句が気に入らない。「出す」という表記と措辞は、
   えらく目立つ上に意味がよく把握できない。


  百年の宿に目覚むる薄暑かな
  *「百年の宿」が唐突であり、思わせぶり。築百年を
   経た宿のことなのか?何かの隠喩か?と思い始めると、
   それほど面白くないわい、という結論になる。


小澤實の作品から。
  冴返る殻に分けたり黄身白身
  *切れの場所が初句と二句目二箇所にある形だが、
   「たり」の切れが強いので、「冴返る殻」と続くのか、
   と一瞬思ってしまう。意味的には「殻に分けたる黄身白身
   なのだが、「る」の重なりを避けた表現にしたのであろう。


  山桜花に若葉の黄金なす
  *季語が重なっているのは許容するにしても、
   「黄金なす」では、言葉が派手なわりに、いまいち
   イメージがピッタリこない。


  高陽の酒徒となるべし田芹あれば
  *結句が気になるのである。「田芹あり」でよいのでは? 
   意味は、田芹があるので、これを肴に昼日中から酒を飲みたい
   気分だ、ということ。「あれば」では説明になる。